上海通信Shanghai Report

中国を正しく生き抜くための中国語講座~第93回「养乐多」

2024年04月27日


イラスト:Liya

こんにちは。Beauty Works Shanghaiの清水です。

今週のサバイバルチャイニーズは、养乐多(yang3 le4 duo1)、日本語的発音”やんらぁどぅおー”で、意味はヤクルトです。

乳酸菌飲料のヤクルトは、中国でも各地のスーパーやコンビニ、街の小さな商店など至るところで販売されており、一部世代の中国人にとっては、子どもの頃の思い出の飲み物にもなっています。

ヤクルトは1964年に台湾、その5年後の1969年には香港に事業進出していますが、中国大陸への本格的な進出は2002年と意外と時間がかかり、広東省からスタートしています。

ヤクルトの中国語ブランド&商品名は、実は「养乐多」と「益力多」と2つあります。もしやパクリ品!?と、混乱するかもしれませんが、この二つの名前とも実は本物なのです。「益力多」は広東語の発音を参考にして付けられた名前なので、広東省や香港など華南エリアで使用されていまして、それ以外のエリアでは「养乐多」を使用しています。

その昔、70~90年代前半までのことですが、日本の多くのブランドは台湾や香港を経由して商品が中国大陸に流入、そしてその商品の流れを追うように事業進出してきたので、繁体字を使い、発音も大陸の普通語(標準語)とは大きく異なる南方(華南)の発音がそのまま(勝手に)中国語になったケースが数多くあります。つまり、日本から中国大陸に持ち込まれた際、台湾人や香港人のビジネスフィルターがかかったため、正式には意図しない中国語ネーミングが生まれたわけです(もちろん、すべてそうではない)。

その後、メーカーとして大陸への本格進出が始まった時点(概ね90年代後半から2000年代前半にかけて)で、多くのブランドがブランド統一(中文名称統一)を図ってきましたが、ヤクルトさんのように現在に至るまで中文名称が2つ存在するブランドも一部であります。ちなみに、例えば、タイヤメーカーのブリヂストンは、当初「石桥轮胎」つまり”石橋タイヤ”と呼ばれていましたが、90年代後半からの大陸への本格的な事業進出に伴い現在では「普利司通」(pu3 li4 si1 tong1)に統一されています。

早期に海外進出したブランドであればあるほど、市場にネーミングが浸透した後での名称変更や統一は、かなり骨の折れる気の遠くなるような仕事でして、莫大な労力とチェインジングコストがかかるのです。

***************************************
文責
碧优缇商务咨询(上海)有限公司
COO 清水誉
慶應義塾大学法学部法律学科卒業、関西学院大学大学院経済学研究科前期博士課程
修了、経済学修士。専門は、東アジア経済、中国労働経済。
1988年株式会社ブリヂストン入社、1993年広州事務所代表、1995年北京事務所代表、
1999年株式会社博報堂入社、2005年広東省広博報堂広告有限公司総経理などを歴任
し現職。中国ビジネス30年のスペシャリスト。
***************************************